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奈良時代の「大嘗祭」に迫る第一歩 平城京跡から「大嘗」の木簡が初出土
2024.03.19 18:44
奈良市にある平城京の跡の朱雀門に近い場所から「大嘗」の文字が書かれた木の札・木簡が見つかりました。天皇即位後の重要な儀式・「大嘗祭」のための物資を運んだ荷札とみられ、奈良時代の「大嘗祭」に迫る大きな一歩として今後の研究が注目されます。
1300年の時を経て当時の人々の営みを今に伝える木簡。見つかった木簡の地名の次に書かれていたのは「大嘗」の文字です。「大嘗祭」は天皇が即位した後に初めて行う新嘗祭で、7世紀・天武天皇または持統天皇の時代に始まったとされています。「大嘗」と書かれた木簡は4点確認されており、このうち1点は「大嘗分」として「荒炭」を一石送ったという内容で、物資に取り付けた荷札とみられます。
また、年号が書かれているものもあり、それらは聖武天皇が即位した神亀元年=724年に集中しているといいます。
「大嘗」と記された木簡が見つかるのは初めてで、発掘調査した奈良文化財研究所は聖武天皇の「大嘗祭」に関わる木簡とみて間違いないとしています。
奈文研史料調査室 馬場基室長
「今回の木簡は大嘗という言葉自体がそんな言葉を書く木簡があるのかと。これまで出ていなくてまさか大事な儀式のことを直接書いた木簡が出るとは思っていなかったので、本当に驚いてしびれました」
木簡が見つかったのは平城宮の朱雀門のすぐ近く、朱雀大路に面した当時の一等地です。東西2.8メートル南北2.5メートルの穴が見つかり、木簡は穴の最も下に敷きこまれた有機物の層から出土しました。木簡は現時点で約1000点、最終的には1500点程度になる見込みでまとめて廃棄されたと見られることから「大嘗」の文字がない他の木簡も「大嘗祭」に関係する可能性が高いということです。また木簡以外にも栗の皮や木の葉、蓆などが同じ層から見つかっています。
奈良時代の「大嘗祭」の様子が明らかになる可能性があるという今回の発見。様々な謎も浮かび上がりました。
「大嘗祭」の儀式で使われた遺構は、孝謙天皇を除く6代分が平城宮内で確認されていますが、今回なぜ朱雀門の外で「大嘗祭」の木簡が見つかったのか。研究者は荷札という点と、現場で見つかった整然と並ぶ建物の跡との関連に注目します。
奈良大学文学部 渡辺晃宏教授
「荷札っていうのは荷物をほどいて普通は最終的に消費するまでついてるっていうふうに言いますから、あそこに大嘗祭に関わるものが運び込まれて、そこで荷ほどきをして、大嘗祭の準備をその場所で行っていると考えるのが荷札の出土状況からすると、一番自然だろうと思います」
また、木簡に書かれた地名を調べてみると、現在の岡山県である備中国の全ての郡が網羅されているといいます。しかし歴史書=続日本紀の記述には、当時の「大嘗祭」を「由機国」「須機国」として支えた国に備中の名はなく、どのような関連性があるのか、今後の研究成果が期待されます。
奈良大学文学部 渡辺晃宏教授
「(大嘗祭は)天武・持統ぐらいから始まっただろうと言われている儀式ですから、いろいろまだ試行錯誤をしててもいい時代。平城京自体が聖武天皇のために造られたような都でもありますから、その聖武天皇の大嘗祭ですので、それまでのいろんな試行錯誤の過程を集大成して、新しいものがそこで作られることは十分あると思う。わくわくしますし、分からない、全く未知の世界に入っていけるような史料です」
奈良文化財研究所は今後、出土した木簡を洗い詳しく調べるほか、文献との照合、他の遺物の検討など10年から20年がかりの調査になるとみています。
奈文研史料調査室 馬場基室長
「大嘗祭に迫っていくために誰がどうやって支えたのか、どんなふうに支えたのか、具体的な状況や人々の動きが立体的に分かってくると本当に楽しいですね、おそらくしっかり解明できるのではないかと思います」
なお、発掘現場は現在埋め戻されていて、奈良文化財研究所では今回の木簡を2024年秋に一般公開できるようにしたいとしています。
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