安倍元総理銃撃事件 被告人質問2日目の主なやり取り 安倍氏のメッセージに「絶望と危機感」
2025.11.26 02:10
- 25日、開かれた第11回公判は、山上徹也被告(45)の2回目の被告人質問が行われました。今回は、山上被告が自衛隊に所属していた24歳の時に自殺未遂を起こしたころから、銃の製造などについて、弁護側と検察側両方から山上被告に質問が行われました。主なやり取りは以下の通りです。

- ●弁護側からの質問
- 【自衛隊を辞めたあとについて】
- ※山上被告は自衛隊を辞めたあと、測量士補、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー2級の資格を取得した。
- 弁護士「不動産の勉強をする中で、知ったことがあるのですよね?」
- 山上被告「勉強がてら、昔住んでいた家や祖父の会社の登記簿を取ったら、会社の役員に兄の名前があった。兄も知らないと言っていた。母が自分が調べているのを見て、ばれるのが怖かったのだと思うが『実は土地を売ったのは破産じゃなくて旧統一教会に献金するためだった』と言った。
- 弁護士「あなたは住んでいた家を売って、家族でアパート暮らしを始めた時、母からはなんと聞いていましたか」
- 山上被告「祖父の会社に負債があったと聞いていた」
- 弁護士「母親のうそを知ったとき、あなたはどう思いましたか」
- 山上被告「驚いたというか。驚いたのと、今までのことがやっとわかった。自分たちがどういう状況に置かれているのか、足場が定まった。この時から母がおかしいなと思うことはあった。言動や、貧乏なのに嬉しそうにしているところとか」
- 弁護士「うそとわかってどういう気持ちでしたか」
- 山上被告「今まで自分の責任や不甲斐ないと思っていたことが、母に原因があると知ったら明るい気持ちになった」
- 【兄の死について】
- 弁護士「兄が2015年に自殺していますね」
- 山上被告「その…いろいろトラブルを抱えていましたので、(自分が兄を)突き放していたところもあった。遺体を見たとき非常にショックだった。(兄の)普段の攻撃的な態度は悩んでいたんだろうなと。助けてあげられなかった」
- 弁護士「兄の葬式での出来事について教えてください」
- 山上被告「通夜に教団の人が現れ、突然、旧統一教会の『“なんとか式”をやります』と言い出した。兄は最後まで旧統一教会の母の献金に不満を持っていたので、『帰ってくれ!』と言ったら(相手は)『わかりました』と言った。しかし、その後すぐに『“なんとか式”を始めます』と言い出してびっくりした。怒鳴って止めるしかないが、棺の前ではばかられたので結局黙った。なんてことすんのかなと…」
- 【旧統一教会幹部の襲撃計画へ】
- 弁護士「お兄さんが亡くなった後、何をしようとしましたか」
- 山上被告「自衛隊の時におとなしく仕送りの要求に応えていれば、こうならなかったんじゃないかとか。兄をこういう結末に至らせたのは自分の責任が大きいと思っていました。現状では(妹の)奨学金を返済するのが無理なので、一回失敗した自殺をもう一度やって、生命保険をかけて終わりにしようと思いました」
- ※被告は、かつて未遂で終わった自殺を再び考えるようになる。しかし2018年から考えが変わり、旧統一教会の幹部らを襲撃する計画を企てるようになる。
- 弁護士「その時の思いや考え、出来事を教えてください」
- 山上被告「何かの機会で母と話すことがあり、旧統一教会や兄のことを話した。母にとって兄が亡くなったのは過去のことというか、母が信じる死後の世界で幸せに暮らしていることになっていた。それは献金したおかげで、兄が生前苦しんでいたのは、教団に(母親の献金額の一部を)返金をさせたからだと思っているようだった。自分は兄のことを悔やんで責任を感じているのに。自衛隊で自殺しようとしたことや、兄の通夜で信者が勝手にやったことがフラッシュバックしてきた」
- 【銃を作ろうと思った理由】
- 弁護士「どうして銃を作ろうと思ったのですか」
- 山上被告「ナイフだと緊張し、心理的抵抗がある。どう距離を取るか考えた時に火炎瓶もありましたが投擲する必要があるので、距離をとるのに銃が一番良いと思いました」
- 弁護士「銃刀法違反で起訴されていますが、片手で打つことを念頭において作った銃はありますか」
- 山上被告「撃てるか撃てないかでみたら、撃てるものもあります。基本的に照準を狙ったり、次の準備を考えたら、両手で撃てるなら両手で撃つべきなので、両手で打てるように作っていました」
- 弁護士「片手で撃ってみたことは?」
- 山上被告「非常に至近距離でしたが、撃ってみたことはあります」
- 弁護士「どうなりましたか」
- 山上被告「反動を吸収できずに、上に跳ね上がる状態でした」
- 弁護士「銃が完成して、誰に対して使う予定でしたか」
- 山上被告「韓鶴子です」
- 【安倍元総理が旧統一教会の友好団体に送ったメッセージ動画について】
- 弁護士「安倍元総理がメッセージを述べているUPF(旧統一教会の友好団体)の動画を見た時に考えたこと、思ったことは?」
- 山上被告「(教団が)どんどん社会的に認められていくと言いますか、問題なく認識されていってしまうんじゃないかなと思いました」
- 弁護士「その結果どうなると思いましたか」
- 山上被告「敵対するものは『サタン』だと言う宗教なので、力を誇示するといいますか。被害を被った側からしますと、非常に悔しい、受け入れられないと思いました」
- 弁護士「あなたの感情を言語化するなら?」
- 山上被告「絶望と危機感」
- ●検察側からの質問
- 【銃と火薬の製作について】
- 検察官「試射に使っていた場所はどうやって見つけましたか」
- 山上被告「Googleマップの航空写真で、山の中で開けたところはないかと探しました」
- 検察官「火炎瓶ではない方法で、襲撃を考えたことはありますか」
- 山上被告「銃があれば一番ですが、当時は作れると思っていなかったので色々調べて、圧力鍋に黒色火薬を詰めた爆弾などを考えていた」
- 検察官「パイプ銃の製造方法はどうやって調べましたか」
- 山上被告「インターネットで調べると特にアメリカのDIY、銃を試作しているものがあった」
- 検察官「火薬もインターネットを参考にして製造したのですか?」
- 山上被告「はい」
- 次回の裁判は12月2日(火)に開かれ、被告人質問のほか弁護側の証人として宗教社会学者が出廷する予定です。動機の解明や、なぜ安倍元総理を狙ったのかなど、山上被告本人の口から語られるか注目が集まります。